6色のブルーナカラーに込められたシンプルの法則

ブルーナカラー

うさこちゃん、ナインチェ・プラウス、ミッフィー。

オランダの絵本作家ディック・ブルーナによって描かれたミッフィーは、1955年に最初の絵本が出版されて以来、60年以上に渡って世界中の子どもたちに愛されています。

きょーみ

わたしも小さい頃、よくテレビでミッフィーのアニメを見ていました。シンプルなお話と耳に残るテーマソングが大好きでした!

ブルーナは絵本に使用する色に強いこだわりがあり、赤、青、緑、黄色、茶色、グレーの原則6色+黒を使用します。

そんなブルーナのこだわりが詰まった6色の色は、「ブルーナカラー」と呼ばれています。

ブルーナが厳選した6色には、どんなメッセージを込められているのでしょうか?

ディック・ブルーナのすべて 改訂版』より、ディック・ブルーナのブルーナカラーについてご紹介します。

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シンプルにこだわる

ミッフィーが誕生した当初、ブルーナが絵本に使用していた色は赤、黄色、青、そして緑の4色でした。

その後、1968年『じのないえほん』で登場したうさぎにグレーを、1969年『こいぬのくんくん』に登場した子犬のスナッフィーに茶色を、デザイン上の都合でやむなく採用しましたが、ブルーナがそれ以上の色を足すことはありませんでした。

にんじんが出てくるときだけに使う「にんじん専用のオレンジ」が唯一の例外です。

2010年に福音書書店から出た「うさこちゃん」シリーズのリデザインを手がけたデザイナーの祖父江 慎(そぶえ しん)さんが、うさこちゃんに使用するにんじん色に関してこんなツイートをしています。

レジェやマティスに影響を受ける

ディック・ブルーナは20歳の頃、ロンドンやパリの美術館を回る中でマティスやレジェの絵画に出会います。

ブルーナはそのときの感情を、以下のように綴っています。

中でもマティスの絵は強烈でした。それはシンプルな絵なのです。けれど、ダイレクトに心を打つのです。そして、思いました。絶対に絶対に描きすぎてはいけない、複雑にしすぎてはいけない。そして、僕の作るものはシンプルでいて、見る人にイマジネーションを働かせるものでなくてはならない、と。

─ディック・ブルーナ

『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』pp.27 講談社(2018)

ブルーナカラーのシンプルさは、若い頃に観たシンプルな芸術作品に大きな影響を受けていました。

赤:幸せの色

ブルーナカラー赤

Webカラー:#d95d2a

赤はあなたの方へ向かってくるあたたかい色

─ディック・ブルーナ

『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』pp.28 講談社(2018)

赤は幸せを表現する色。

背景の赤が、登場するキャラクターの嬉しい感情を表しています。

きょーみ

ブルーナの赤は、どちらかというとオレンジ寄りの赤ですよね。血の赤でもなく、情熱の赤とも違う。読者をほっと笑顔にさせるような、優しさが滲み出る赤です。

黄色:親しみやすさ

ブルーナカラー黄色

Webカラー:#f8df4a

黄色も前に出てくる色。赤と緑があたたかいのは、黄色が入っているから

─ディック・ブルーナ

『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』pp.29 講談社(2018)

ブルーナは黄色を赤や緑を引き立てる色として、位置付けています。

背景の黄色は家の中を表すときに、よく使われています。

きょーみ

パチっと目の覚めるような黄色。黄色は基本、他の色に埋もれがちな色ですが、ブルーナの黄色は他の色と並んでも遜色がないくらい、主張の強い黄色だと思います。

青:不安な気持ち

ブルーナカラー青

Webカラー:#1d508e

青はよそよそしい色、そして冷たい色。あなたから去っていく色。怖さや寒さを描くときに使います

─ディック・ブルーナ

『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』pp.30 講談社(2018)

ブルーナは雪の降る日、人や動物の不安な気持ちを表すときに青を使っています。

きょーみ

深い青。海水や空の色といった清々しい青ではなく、もっと深いところにある青です。浮ついておらず、落ち着きを感じます。

緑:自然の色

ブルーナカラー緑

Webカラー:#3c782e

緑は伝えたいことを伝えるために必要な色

─ディック・ブルーナ

『ディック・ブルーナのすべて 改訂版』pp.31 講談社(2018)

緑は地面や木、山などの自然物を表すときの色。

背景では、外であることを表す色として使われています。

きょーみ

これも青と同様、落ち着いた緑です。どっしりと構える安心感。

茶色:木や動物

ブルーナカラー茶色

Webカラー:#845c40

茶色は木などの自然物、熊などの動物、髪の毛などを表現するときに使われています。

上記4色に比べると、登場頻度は少なめです。

グレー:動物本来の姿に忠実な色

ブルーナカラーグレー

Webカラー:#726f62

グレーはうさぎやぞう、カバなどの動物を描くときに使われています。

グレーも茶色と同様、ピンポイントで使用される色です。

きょーみ

茶色とグレーはブルーナの絵本の中で、ここぞという場面で使うアクセントカラーの役割を果たしています。その証拠に茶色とグレーは占有面積が広い背景には、ほとんど使用されていません。ブルーナのメインカラー4色×アクセントカラー2色という色使いのセンスには、グラフィックデザインの基礎が詰まっているようにも感じました。

おわりに

ブルーナのこだわりの詰まったブルーナカラーをご紹介しました。

それぞれの色がしっかりとした主張を持ちながら、絵本の中で合わさったときに絶妙な安定感をもたらしています。

きょーみ

シンプルさを極限まで追求したブルーナカラーには、ミッフィーの人気の秘密が詰まっていました。

ディック・ブルーナのすべて 改訂版』は、ブルーナの生い立ちから作品に対するこだわりまで丁寧に綴られている良書です。

ディック・ブルーナについてさらに詳しく知りたい方は、ご一読をおすすめします。

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